お金ではない財とは・・


代表:

私もまったく同じように思っています。ですから親が残すべきものというのは教育だと考えているんです。自分で稼げる能力を身につけさせるということですね。

大西:

西郷隆盛は「児孫に美田を買わず」という言葉を残しましたが、そういうことですね。

代表:

そうです。私達は術の上でも易経を使いますが、易経の中に「積善の家には必ず余慶(よけい)有り。積不善の家には必ず余殃(よおう)有り。」という一説があります。善行を重ねた家には子孫にまで福徳があり、不善の家には子孫にまで災いがあるということが言われています。善悪の判断、人としてどうあるべきか・・・といった「本来あるべき姿がどういうものか」を子孫に伝えていくことが、結局は家も繁栄していくということだと思います。

大西: おっしゃる通りですね。私は最初に言ったように、親にはとても感謝しているんです。経済的には貧しかったけれど、人の道というのをきちんと教わった、そして両親の姿をみて学びました。常に兄弟を公平に扱ってくれて、不公平と感じたことはまったくないし、そういう意味でも大変に愛情を注がれたと感じています。親が注ぐべき愛情というのは、そういうものが大切なんだと思いますね。

代表:

私の見聞きする中でも、財産があることがわかっているので、親の苦労を見ていない世代になると安心しきっているというか、厳しさのようなものがなくなっていきます。もちろん、実際に生活への不安などはないのだと思うのですが、事業を継いだりしていても一からみていないので、何かが起きた時に弱さが出ると思います。ハングリーとまではいかないまでも、自力で何とかしてやるという気概がないと、私などは、心配になってしまいます。

大西: 昔は、先祖から受け継いだものだからどうしても守って次に引き継ぎたいという意識が強かったのですが、最近はずいぶん変わったなと感じます。あるものは使ってしまえというか・・・。

代表:

よく、日本では財産も三代でなくなってしまうなんて話を聞きますが、実際のところはどうなのでしょう?

小林:

まあ、いろいろ控除があったり、遺産の額にもよるのですが、例えば各法定相続人の相続額が3億を超えれば税率は50%ですから、何もしなければ続いてはいかないですね。

代表:

やはり、相続対策ということになってくるかと思うのですが・・・・

大西:

これは、強く感じていることですが、みなさん相続についての知識がなさ過ぎるということです。娘が嫁に行って姓が変わっているから、相続の対象じゃないと考えている人も結構いるんですよ。

代表:

財産がありながら、その調子では、相続で争いが起こってきますね。

大西:

その通りです。逆に言えば、財産を遺す人間が適切な遺言を書いておけば、相続争いを未然に防ぐことができるのですけどね。そういう適切な遺言がないと、ちょっと知識のある人がずる賢く立ち回っていい思いをしたり、酷い相続争いに発展したりということがでてきてしまいます。

代表:

まずは財産を遺す人間が、自分亡き後のことをきちんと考えておくべきという事ですね。

大西:

そうなんですね。日本の場合、遺言というと拒否反応をする方が多いんですが、絶対にきちんとやっておいたほうがいいです。その点、欧米の人たちの意識というのは違っていて、夫婦でお互いに遺言書を書き合っていて、飛行機に乗る時も夫婦で別の便に乗るような人もいます。不慮の事故などで一緒に亡くなってしまうようなことを避ける為ですが、その位、意識が高いですね。

代表:

遺言書があれば、書面通りに相続が行われるということでしょうか?

小林:

法律で定められた遺留分というものがありますので、一人に全てを・・と思っていても、遺留分権利者が権利を主張すれば、その通りにならないという事はあります。しかし、遺留分を除けば、財産の処分については遺言者の意思が絶対ですから、基本的には遺言書の通りに相続が行われることになります。

司会:

でも、子供からはなかなか言い出しにくいし、ご本人もまだまだ元気だ!という意識の方が多そうな気が・・・遺言書がないというケースはなくならないのでしょうね。



代表:

そういう意味で、残される人たちの方にも知識がないといけない訳ですね。

大西:

そうですね。例えば、相続税の申告と納付期限は相続が発生してから10ヶ月以内と定められているのですが、ずる賢い相続人が、「暫定的に・・・」などと他の相続人に説明して遺産分割協議書に署名捺印させ、結局それが正規の分割協議書とされてしまい他の相続人が不利益を被ったなんていう事案もありましたね。また、たとえば負債があって相続を放棄したいと思ったら3ヶ月以内に手続きをしなければいけないですが、それも知らないと借金を背負う事になったりもします。

代表:

財産を持つ側も相続する側も、やはり知識と意識を持っている必要がありますね。

大西:

相続の争いは、まさに骨肉の争いだ・・・というケースを多く見ていますし、人間のあさましさの縮図のようなものです。清貧という言葉がありますが、まさにお金のない人のほうが清々しいと感じますよ。

代表:

そんな争いを見ていたら、更に下の世代にもいい影響はないですから、まさに積不善の家に余殃あり・・・ですね。

大西:

そうです。親が自分の兄弟のことや、年老いた親の事を悪く言ったり、邪険に扱うような態度を見て育てば必ず子供も同じような大人に育つと思います。結局は自分に返ってくるということですね。

代表:

運命学では常に原因と結果の法則・・・つまり起こってくる事象はすべて原因をつくった自分にあると考えます。相続ということも、結局は自分の考え方、意識というものが争いを生むか繁栄を生むかを決めているんだと感じますね。正しく生きている親の姿を見せることが良い原因をつくることなのではないかと考えます。

大西:

幸せの為と思って頑張ってきた結果が、子供達の争いでは悲しすぎますからね。どこかで本当に与えるべきものに気づいて、財が残せるのであれば、一番良い形を自分が考えるというのがいいのではないでしょうか。

司会:

そのためにも、知ってると知らないでは大きな違いがありますから、法律的な知識も大切ですね。是非、ご縁のある方々へ、先生方とご一緒にセミナーなども開催させていただきたいと思います。本日は大変お忙しい中、ありがとうございました。



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弁護士
大西 幸男
[]
・1941年 北海道生 早稲田大学卒業 昭和48年弁護士登録。 
・昭和53年に西銀座法律事務を設立(代表)し、現在に至る。
・主な取り扱い事件としては、一般民事事件(東京スモン訴訟など多数)や商事事件の他、
・相続などの家事事件を多数取り扱っている。
・東京地方裁判所調停委員、東京民事調停協会連合会副会長、世田谷区監査委員などを歴任。
著書
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